前回、POG極東本部長ことヘルベルト・ミューラーが更迭されて、ルークが監理官として戻って来ました。彼が早速手掛けたのが、カイトをファイ・ブレインへと導くこと。そして、ついに直接ルート学園に乗り込みます。
カイトの周りでは、キュービックもアナもパズルに目覚めたようで、普段もパズルに興じている様子が描かれています。キュービックがやっているのは魔方陣(図1)で、解いているというよりは、作っていると考えた方がいいでしょう。大きさは5×5で、1列の合計は65になります。ここではバシェーの方法と呼ばれる、5×5や7×7などの奇数方陣の作り方として有名な方法が用いられています。途中図を示しました。キュービックを真似て解いてみてください。答えはこちら。
11 | 7 | 3 | ||
12 | 8 | |||
17 | 13 | 9 | ||
18 | 14 | |||
23 | 19 | 15 |
アナが、いつもの第2美術室で解いていたのは、数字の配置のきれいなナンプレ(図2)です。これもアナを真似て解いてみましょう。周りの猫たちも解きたそうでしたが、猫にも解けるかどうかは疑問です。答えはこちら。
7 | 9 | 3 | 5 | 1 | ||||
9 | 4 | |||||||
5 | 8 | 6 | 4 | 7 | ||||
9 | 6 | 5 | 2 | |||||
7 | 3 | 4 | 6 | |||||
4 | 2 | 8 | 9 | |||||
1 | 4 | 8 | 2 | 3 | ||||
2 | 9 | |||||||
4 | 7 | 5 | 9 | 2 |
カイトが、教室に入って目にするのは、ホワイトボードに書かれた、4×4のマスに暗号のようなアルファベットの文字(図3)。これはワード・スクエアと呼ばれる、正方形のマス目に単語を並べた言葉遊びの一つで、伝統的なイギリスのワード・ゲームです。古くは古代ローマの時代から存在していて、ときには古文書や石板などに、文字の魔方陣として画かれています。イギリスのパズルの歴史研究家、シオドア・G・マイヤーによると、ワード・スクエアの第1号(図4)は、1850年代初期の作品だそうです。そして、これが代表的なあるパズルを生み出すことになります。
1913年晩秋、アメリカの新聞「ニューヨーク・ワールド」の編集者、アーサー・ウインはクリスマスに向けて、何か新しい企画はないか思案していました。元々イギリス人だったアーサー・ウインは、子どもの頃に遊んだワード・スクエアをヒントに、ことばをクロスさせたパズルを考案しました。これは、同年12月21日付けの「ニューヨーク・ワールド」紙の日曜版に、ワード・クロスと名付けられて掲載されました。これが世界最初のクロスワード・パズルです。社内での評判は決していいものではありませんでしたが、掲載されるや否や、読者の反響は大きく、爆発的なヒットとなりました。現在では、この12月21日が、クロスワード・パズルの日と呼ばれています。
日本で初めてクロスワードが紹介されたのは、大正13年(1924年)のこと。海外でこんなパズルが流行しているという内容でした。そして、翌大正14年(1925年)に、初めて仮名で作られたクロスワード・パズルが「サンデー毎日」(3月1日号)誌に登場します。名前は「新智識遊戯“嵌め字”」というものでした。その後、クロスワード・パズルの和訳として、十字語判断、十字語合わせ、十字語謎、十字語嵌め字謎解きなど、いろいろなものが登場し、大人気を博しました。
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縦、横に、MILE(マイル)、IDEA(考え)、LENS(レンズ)、 EAST(東)の4つの言葉がクロスしている。 |
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※CAT(猫)、ATE(食べた)、TEA(紅茶) |
さて、カイトとルークが親友だったことが、ここで明らかになります。そして、カイトは短期留学という名目で、ルークと二人、イギリスへと旅立ちます。
二人が知り合った頃のことが、回想シーンとして描かれていますが、その中にルークが作ったパズルが出て来ます。これはルート64(図5)というもので、8×8のマス目の中を、1から順番に1マスずつタテかヨコに進んで、8マス目には8に、15マス目には15に、最後の64マス目の64で終わります。途中の数字では、その数字通りの順番で通過しなければいけません。また、斜めに進んだり、飛び越えて進んだりしてもいけません。答えはこちら。
1 | 15 | 64 | |||||
57 | |||||||
8 | |||||||
22 | 43 | 50 | |||||
29 | |||||||
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二人にとって大切な人物、青年Xと出会ったのが、教会の地下に造られた迷路でした。中世に建造された教会には、迷路を模した床画や壁画、実際の迷路なども、多く見られます。彼らが挑戦した迷路(図6)を示しておきましょう。こちらは特に答えを付けません。
ゴールの先には、新たな迷路がありました。これはルークが作ったもので、迷路自体は、石板の地図に画かれたように、川の支流のような構成で、その奥にある鐘楼へと導くものです。この鐘楼こそが、ファイ・ブレインを育成するためだけに作られた、財のない愚者のパズルの本体です。そして、カイトに重い運命と試練が待ち構えているのです。つづく…。ということで続きは次回に。
(文責:郷内邦義)
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