ルークがPOGの幹部であること、そしてカイトをファイ・ブレインへと導こうとしていること。幼かった頃のルークを知っているカイトは、その豹変ぶりがどうしても信じられずにいます。一体、ルークの身に何があったのか。それを確かめるべく、カイトとノノハは、かつてルークが育った研究施設へと向かいます。
ルークがいたであろう研究室の前には、鍵の役割を担ったスライドパズル(図1)があります。「LOOK RAB」(RABを見ろ)では意味が通じません。LとRを入れ替えると、「ROOK LAB」(ルークの研究室)となり、意味が通じます(図2)。つまり、LとRを入れ替えるだけの簡単なスライドパズルのようです。
スライドパズルは、「ファイ・ブレイン」ではおなじみのパズルで、今後も何度か登場します。本編では、第1話で、ミノタウロスの迷路の入り口に“斧のスライドパズル”がありました。あれは手数の多い、意外と厄介なパズルでしたが、今回はピースも7つしかないので、簡単なパズルに見えます。ですが、考えなしでやってみると、かなり難解なパズルなのです。実は、ここに小さなトリックが隠されています。
パズルトイの1つ、「15パズル」の14・15問題というのをご存知でしょうか。アメリカのパズル作家、サム・ロイドが、1878年に15パズルの普及を目的に、15パズルにおける、14と15を入れ替えた問題を提示して、解けた者に1000ドルの賞金を出すと謳ったのです。これが評判を呼んで、15パズルは当時、爆発的な売り上げとなりました。全米中の人たちが、この問題の虜となって、それこそ、仕事もせずに熱中したそうです。
その後、この問題は不可能であることが証明されました。つまり、15パズルのようなスライドパズルでは、隣同士の2つを入れ替えることはできないのです。当のサム・ロイドは、そのことを知っていて賞金を付けたのではといわれています。
ルークのスライドパズルも同様で、LとRとの入れ替えは、本当は不可能なのですが、他にもう1カ所入れ替えることで、可能になります。もうお分かりですね。Oが2つあるところがミソで、OとOを入れ替えることで、LとRの入れ替えができるのです。ですから、考えなしでは永遠にできないかも知れないわけです。NHKのデータ放送で、このパズルが遊べますので、興味のある方は遊んでみてください。解答例はこちら。
ルークの研究室には、ルークが書き残したと思われるノートがありましたが、パズルの制作記録のようですが、パズルのネタ帳というより、悍ましい凶悪なノートといったものでした。改めてルークの変貌ぶりが窺がえるように思います。
そんな中、アナが宿舎からいなくなるという事態が起こります。スピリチュアルな能力を持つアナは、何かに呼ばれるように、カイトとルークの思い出の地、グレートヘンジへと行くのです。そして、カイトとノノハもアナの後を追います。
一方、部屋に残されたギャモンとキュービックは、アナ宛の封筒を見つけます。その中には、何やら絵のような手紙(図3)がありました。2人は暗号と気付き、これを解きます。解放は後に語られますが、上下を重ね合わせて、透かしてみると「GREAT HENGE」(図4)と読めるわけです。キュービックは、自分がPOGに呼び出されて痛手を負ったように、アナの身を案じ、救出するため、ギャモンと共に2人もまたグレートヘンジへ向かうのです。
さて、グレートヘンジでは、POG幹部の紅一点、メイズが、自身が改造した迷路で、アナを倒すべく、待ち構えていました。と、そこにアナが現れ、アナとメイズのちぐはぐな会話が一くさり。ルール説明も聞かないまま、迷路へと入って行くアナ。慌ててルール説明をする、敵ながら親切なメイズ。この2人のやり取りも、この話の見所でしたね(メイズ人気を上げた要因となった回でもありました)。石柱と石柱の間を通って、中央の星印の石版まで行くというものです。ただし、石柱に描かれた2つのマーク、太陽と月のうち、通っていいのは、月と月の間だけ。太陽と太陽、太陽と月の間を通ると、すべての石柱が倒れて、プレーヤーを押し潰してしまう。
アナにしてみると、初めからルートが分かっていたようです。鳥眼でも持っているのか、いかにも俯瞰で物が見られるアナらしい行動といえます。初期に設定した迷路の設計図(図5)を示しておきます。アニメでは、月らしい迷路に形作られたので、少しイメージが異なります。
図の石柱に描かれた○が月を表し、●が太陽を表しています。○―○の間を青線で、○―●、●―●を赤線で結んでみましょう(図6)。赤線は通ってはいけない線、青線は通っていい線になります。
こうして見れば、おのずとどこを通ればいいかが分かります。アナが辿ったルートが(図7)になります。
何も知らずに駆けつけたキュービックとギャモン、アナが迷路の中央で立ち往生していると勘違いし、オカベくんをアナの救出に行かせます。オカベくんは、真っ直ぐアナのところへ行くわけですから、通ってはいけない石柱の間を通過しても仕方ありません。すべての石柱が倒れ、迷路は崩壊してしまいました。ゴール地点にいたアナは無事でしたが、オカベくんはただの屑鉄となりました。メイズは、「私の迷路が…」と、迷路の崩壊を悲しんでいますが、そもそも崩壊するような仕掛けを作ったのはあなたですからねえと視聴者から一斉にツッコミがあったとか、なかったとか。
そして、アナはそこに放置されたままの組木パズルを見つけるのです。これこそが幼いルークがカイトのために作った組木パズル。これを作った頃のルークは、カイトが知るルークだったと告げるアナ。そのことばに慰められるカイト。今回は、アナがアナらしく活躍する素敵な回でした。
(文責:郷内邦義)
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