自身のギヴァーの才能を活かすために、POGに加わったギャモンが今回の主人公でした。姫川エレナが書いた推薦状を持って、POG本部にやってきたギャモンでしたが、アイドルのサイン1つで、簡単にセキュリティーを通れる当たり、ずさんなのか、エレナの力が絶大なのか。ともかく、3幹部としては、そうそう通すわけにもいかず、早速ギャモンとのパズル対決が始まりました。
まず、最初の相手は、サイコロを自在に扱うダイスマン。取り出したパズルは、ダイス・ナンプレ(図1)です。ルールは、普通のナンプレと同様。ただし、サイコロを用いるため、サイズは6×6で、タテ、ヨコに同じ数のサイコロが並ばないようにする。さらに、赤い線で囲まれた、2×3のブロック内にも同じ数のサイコロを置かない。
ギャモンはパッと見て、もう答えを出しています。そして、図の上から一段目の6と、左から1列目の1を取り除いても、問題として成立することを見抜いてしまいました。それが図2です。もうこれ以上は取り除けません。難易度を上げながらも、ちゃんと解ける問題になっています。ギャモンの実力が伺えるシーンです。
これの解き方の一部は、「もっと×2神のパズル」の中でも紹介されました。詳しい解き方については、こちらをごらんください。
さらにギャモンは、これの解答を並べる際に、もう一つおまけを加えました。サイコロを並べたときにできる4つの側面についても、同じ数のサイコロが並ばないようにしたのです(図3)。注意すべきは、4隅の4つのサイコロで、見える側面が2つあるので、これを決めるところから配置すれば、簡単に並べることができます(POG3幹部が驚くほどのことではないのですが…)。
次に挑んできたのが、迷路を得意とするメイズです。メイズは迷路(図4)の中に素敵な名前を隠しました。
初めの段階で、メイズが出題するのは迷路(MAZE)だから、「MAZE」という名前を迷路(図5)に組み込もうと考えました。
それにギャモンが手を加えて、みんなを驚かせるという話だったので、そこから「AMAZED」(驚いた)という単語を結びつけたのです。元々、「MAZE」が隠されている迷路にしては、「MAZE」の左右に1文字分ずつスペースがあるのはおかしいと思いますよねえ。だいたい、ちょっと書き加えただけで、AやDがうまく描けるはずがありません。図5を見ればわかる通り、AもDもすでに隠されています。まあ、これについてはご愛嬌というか、遊びというか、「AMAZED」を隠していたのはメイズ自身だったというわけです。ギャモンが書き直した図がこれです(図6)。
ダイスマン、メイズと倒されたところで、フンガが挑もうとしますが、ビショップに制されてしまいます。実は、このフンガの問題も作ってあったのですが、残念ながらカットされました。フンガなら数学系パズルがいいかと、覆面算や小町算などを考えました。これは、後の回に、キュービックがPOGのホストコンピューターにアクセスするときのセキュリティーパズルとして出て来ます。これについては、そのときに解説しましょう。
さて、ギャモンの橋渡し役を担ったエレナですが、カイトとノノハの前に現れ、ギャモンがPOGに入ったことを告げます。そして、エレナが別れ際にノノハに渡したのが、新曲「恋のパズルを解いて」の宣材でしょうか、小さなパズルトイでした。これもエレナの曲のイメージから、矢の刺さったハートのオブジェを箱から取り出すパズルにしました。これは実際に試作品を作りました。図7に、箱に入ったところと、箱から出したところを示します。
試作品は、ハートと矢が木製で、箱が厚紙製です。箱の空いた部分は、同じ大きさの正方形に見えますが、1か所だけ微妙な菱形になっています。面積は、ほぼ同じなのですが、菱形の長い対角線とハートの凹み部分をうまく噛み合わせることで、通すことができるようになっています。そのポイントがわからないと解けないパズルですが、こうしたパズルの難点である、偶然解けてしまうというところを、ノノハに実践させています。ノノハは初めて解けたと大喜びですが、元に戻すことができたのでしょうか。
一方、POG本部では、ギャモン対ビショップの対戦パズルが準備されました。バイク対決のアイディアは、脚本家の野村さんによるものです。もっとも、ビショップをバイクに乗せたらかっこいいのではというところから始まっているのですが…。実際に、これをパズルにするのは大変な苦労でした。こうしたものは、どうしてもゲームになってしまいがちで、まず、互いのバイクの速度を一定にすることで、パズル性を出しました。初めに設定したコースが図8です。
コースは、平行する5つのレーンで構成されていて、車線変更が可能なゲート(青丸部分)を設けました。バイクに取り付いたスイッチによりゲートが開閉し、車線を変更します。基本的に、自分が内側のレーンを通り、相手を外側のレーンに追いやることで、その差を縮めるわけです。もし、相手に後ろを取られたとしても、自分が外側に出て、相手を内側に追いやれば、タイミングによっては、前後を入れ替えての逆転も可能です。また、10個のゲートが開いて、11個目をスイッチングすると、一番初めの1個目に開いたゲートが閉じるというのもパズル的といえるでしょう。どこのゲートが開いて、次にどこかが開いたとき、どこのゲートが閉じるか、これらを把握していないと勝てません。図9の赤線のうち、下がビショップが利用したライン、上がギャモンが最後に止めを刺したときに利用したラインです。
コースの意図的な膨らみは、より長い直線を作るためのものですが、アニメ本編ではバイクコースらしいスマートなデザインに変更されました。
こうしてビショップを倒したギャモンは、ルークの求めに応じ、晴れてPOGの一員となりました。そして、ギャモンはどんな手を打って出るのか、その本心はどこにあるのか、今後の展開に益々目が離せません。
(文責:郷内邦義)
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