POGのギヴァーとなったギャモン、対戦型パズルゲームの鉄骨パズルで、カイトとのバトルに挑みます。POG3幹部たちも舌を巻くほどの高度なパズルに、ギャモンのギヴァーとしての才能が伺えます。現実には作れそうにもないだけに、とてもアニメ的なパズルといえるのではないでしょうか。
このパズルのアイディアの素は、脚本家の樋口さんに因るもので、子どもの頃に遊んだ三山くずし(ニム・ゲーム)です。これを、スケールの大きさや難易度を上げようと、立体版にアレンジしてみた訳です。
三山くずしは、コインや碁石などを使い、3つの山に分けておきます。使う数は、10個程度から何個あっても構いません。例えば、3個の山、5個の山、7個の山だと計15個を使います。手番になったら、1つの山を選び、そこから好きなだけ取ります。これを繰り返して、最後の1個を取るはめになったプレーヤーの負けとなります。手番では、必ず取らなければなりません。また、複数の山から取ることはできません。ルールによっては、逆に、最後の1個を取った方の勝ちというものもあります。
ただ、これには必勝法があって、(1-1-1)、(1-2-3)、(1-4-5)、(2-4-6)、(3-4-5)などや、(0-2-2)、(0-3-3)、などの2個以上の2山同数が上げられます。往年の名画『去年マリエンバードで』(仏・伊:1961年)の中で、2人の男がニム・ゲームに興じて、必勝法を論じるシーンが登場します。
同様のゲームに、山の代わりに、1回に取れる数を制限したものがあります。例えば30個の石を用意して、2人のプレーヤーで交互に取り合います。1回に取れる数は1~3個で、最後の1個を取った方が負けです。このゲームなら、みなさんも遊んだことがあるでしょう。
また、商品化されたものでは、デンマークの数学者ピエト・ハインが考案した「ニンビ」というゲームがあります。ピエト・ハインは、「ソーマ・キューブ」というキューブ・パズルや「スーパーエッグ」の考案者として知られ、建築家としても活躍しました。「ニンビ」では、12個の石が変型の六角形のボード上に並んでいます。これを2人のプレーヤーで交互に取り合って、最後の1個を取った方が負けになります。1回に取れる石は、一直線上であればいくつでも取れます。実際には最大4個になります。
さて、鉄骨パズルでは、144本の鉄骨を立体格子状に組んでいます。アニメでは、すべて同じ鉄骨を使っていますが、試作品では赤、青、黄の3色各48本を使いました。プレーヤーは、赤か黄の鉄骨のどこかに陣取ります。タテ組みの青には立てません。途中で移動も可能ですが、相手と同じ鉄骨には立てません。手番では、交互に、同じ色の連続した鉄骨を1~3本消すことができます。ある鉄骨を消すことにより、一番下の面に接続していない、宙に浮いた状態の鉄骨は、連鎖して消えてしまいます。両方が同時に落ちてしまうような鉄骨の消し方はできません。相手(もちろん自分)が乗っている鉄骨は、他に消す鉄骨が無くならない限り選べません。残った鉄骨が、自分が乗っている、相手が乗っている、消すと両方が落ちる、この3パターンだけになったときに、初めて相手の乗った鉄骨を消すことができます。
アニメ本編で、カイトとギャモンが闘った棋譜をご紹介しましょう。棋譜のRは赤の鉄骨、Bは青の鉄骨、Yは黄の鉄骨を示します。Rに続く数字は、下から1段目手前から11、~14、下から2段目手前から21~24、下から3段目手前から31~34、下から4段目手前から41~44、いずれも左からa、b、c。Bに続く数字は、左から1列目手前から11~41、左から2列目手前から12~42、左から3列目手前から13~43、左から4列目手前から14~44、いずれも上からa、b、c。Yに続く数字は、下から1段目左から11~14、下から2段目左から21~24、下から3段目左から31~34、下から4段目左から41~44、いずれも手前からa、b、c。
スタート位置、ギャモンはR-41a、カイトはR-44cにいます。ゲームは、ギャモンの先手で始まりました。
カイトに未来視がなければ、勝負はカイトの勝ちだったはずですが、そうなるとギャモンは死んでしまうことになります。そうしたくない心が、あんな映像を見せたのかも知れません。カイトの変化に気づいたルークは、カイトに救いの手を差し伸べました。おそらく、これこそがルークの目的であり、勝負そのものには興味がなかったのかも知れません。
さて、カイトの身に起こった変化は、物語の核心へと迫って来ます。また、ギャモンにしても、このままでは終わらないでしょう。学園長バロンの動向も気になるところです。次回はどんな話になるか楽しみです。ではここまで。
(文責:郷内邦義)
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